第三者による意見書(Third party observations):高い潜在能力にもかかわらず、過小評価されがちな手段

第三者による意見書とは?

第三者による意見書は、さまざまな法制度1の下で貴重な手段とされているが、その潜在的可能性は、企業によって過小評価されがちである。

欧州特許庁は、第三者による意見書を「欧州特許出願の公開後の欧州特許庁における手続において、第三者は、実施規則に従って、出願または特許に関連する発明の特許性について意見を提出することができる。この者は、手続の当事者とならない」と定義している。

第三者による意見書は「危険」あるいは「厄介」な競合他社の特許(付与済みまたは出願中あるいは係属中)の付与を妨げ、対抗するための非常に潜在的な手段であることは明らかである。つまり、この提出により、形式的なあるいは実質的な異議申立を行うことができ、それに庁の管轄部門が同意する場合、特許権者は、それに応答するために特許の保護範囲を狭める形でのクレーム補正を行わざるを得ない。したがって、技術的特徴の追加により保護範囲を変更させることでその特許出願が自分のビジネスの「邪魔な存在」とならないように、つまり、特許の保護範囲を「無害な」解決策を定義するものとなるようにすることを目的とするといえよう。

しかし、ここで一歩引いて考えてみよう。第三者による意見書を提出する段階以前に、主要な競争相手の出願を監視するサービスを利用するなどして、出願の早い段階でどのような出願がされているかを認識しておくことは望ましい。監視サービスとは、具体的に、競合他社の特許出願を監視し、保護範囲(請求項)を詳細に分析し、独自の調査を実施して新しい資料(主に特許文献、科学論文、書籍、ウェブビデオ公開など)を取得し、前述の第三者による意見書を「都合の悪い」特許出願が行われた国・地域の特許庁へ提出するといったことである。ただし、残念ながら現状では、中小企業はもちろん、大企業においても、非常に重要なかつ不可欠な監視サービスの必要性が認識されていないことがほとんどである。

第三者による意見書提出の利点とは?

第一の利点は費用に関してである。欧州特許庁での異議申立手続きや各国での無効審判手続きは既によく知られた手続きではあるが、これらの手続きは多くの費用が掛かることも知られており、すべての企業が好んで負担しているものではない。第三者による意見書はこれと比較して、安価であるという利点がまず挙げられる。

第二に、提出の時期があげられる。第三者による意見書は、特許が成立するのを待つ必要はなく、一定の提出期間を遵守する必要もない2。例えば、欧州レベルでは、公開後いつでも第三者による意見書を提出することが可能である。したがって、審査段階、異議申立段階、さらに審判期間中にも、この意見書提出を行うことが可能である。

第三に、手続きの当事者ではないという点があげられる。第三者による意見書を提出する者は、提出後、他の手続きを執る必要がない。一方、異議申立や無効申立の手続きでは、周知のとおり、相手方に対して敵対的な手続きを行うことが必要だ。

さらに、上記の他の利点に劣らず重要なのは、第三者による意見書を、匿名で行うか(つまり、誰が意見したかを特許権者に知らせずに)、あるいは提出者情報(「ストローマン」としても可)を開示して行うかの選択ができる点にある。いずれを選択するかは、ケースバイケースであろう。第三者による意見書を匿名で行う場合は、自分が注目されるリスクを負うことはないが、むしろ「その特許出願」が誰かにとって不都合であることを競合他社に知らせることになる。ただし、例えば、EPO異議申立後の審判段階において第三者による意見書が匿名で提出された場合は、審判部の裁量により考慮されない傾向があり、実際には提出されなかったものとして扱われることに留意されたい。一方で、EPOのような一部の法域では、第三者による意見書をその提出者情報を開示して提出した場合、管轄庁はその提出から3ヶ月以内にオフィスアクションを発行するように努力するなど、審査段階などを早めることにつながる場合もある。

さらに、ある国・地域において提出された第三者による意見書は、その後、審査の遅い国・地域でも参照されることが多い。このように、第三者による意見書の一回の提出が、時間の経過とともに複数の効果を生み出す可能性もある。

最後に、成功率についてみていきたい。事実、企業にとって「未知」で「過小評価」されているこの手段は、実は大きな成功につながることがあるのである。弊所では、こうした意見書の作成・提出も行っており、意見書提出後の分析を行った。具体的には、あるクライアントの代理として過去10年間に提出した合計134件の第三者による意見書の分析を行った。以下はその結果である。

– 第三者による意見書を提出した特許出願のうち63%3がその後補正され、事実上特許出願の保護範囲が縮小された。

– 第三者による意見書が提出された特許出願の約21%4は、出願人によって放棄されたか、または国・地域の特許庁によって拒絶された。

– 第三者による意見書のうち、10%は影響を及ぼさず、特許手続きが進められた。

– 6%については、今日現在特段の効果を得ていない。

上記数字を分析することで、意見書提出の真の可能性が見えてくる。実際、提出された通信の84%が補正、放棄、拒絶といった結果になっている。

このようなことから、特許監視サービスと第三者による意見書提出の組み合わせは最良の戦略となり、過小評価されてはいるものの優れた潜在能力を持つ手段であると結論付けられる。

 

注釈

1 例えば、WIPO(802-805条)、欧州特許庁(EPC115条)、米国特許商標庁(35 U.S.C 122(e))、英国特許商標庁(21条)、ドイツ特許商標庁(43(3)条、2 PatG)などがある。イタリアに関する限り、工業所有権法は発明特許、実用新案特許、補足保護証明書に関する第三者による意見書を規定する規則を定めていないが、それでも行政手続きに関する一般規則に基づいて、数年前から許可されている。

2 ただし、国際特許出願については、出願日または最初の優先権日から28ヶ月以内に限り、第三者による意見書を提出することが可能。

3 この割合は、第三者から少なくとも1回の意見書が提出された後に補正が行われたすべての特許出願を考慮したものであり、その補正が意見書を提出したことに直接起因するかどうかは問わない。

4 この割合は,放棄又は拒絶が当該意見書の提出に直接起因するか否かにかかわらず,第三者によって少なくとも1回の意見書が提出された後に放棄又は拒絶されたすべての特許出願を考慮したものである。

 

Nadine Battiato

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