統一特許裁判所の最新の手続規則変更を踏まえたオプトアウトについて
欧州単一特許と統一特許裁判所(UPC)制度は、2023年春に発効予定です。統一裁判所が正式に始動するまでの3ヵ月間、いわゆる“サンライズ”期間に、付与済み欧州特許および係属中の欧州特許出願に対して一括したオプトアウト手続を行うことができます。
現在想定されているタイムフレームを考慮すると、欧州特許権をUPCの管轄適用外とすることを希望する場合は、オプトアウトに必要な要件をすべて満たすように、現時点から必要な確認や手続きを行い、サンライズ期間開始と同時にオプトアウト手続を行えるよう準備を整えておくことが賢明と言えます。
2022年7月8日、管理理事会は、UPC手続規則改訂版を正式に承認しました。
この最新版の規則では、特許が付与された、あるいは出願において指定されたすべての国において特許権者/出願人がオプトアウトに署名をする必要があると定めています。
また、EPC加盟国において複数の特許権者が存在する場合は、すべての特許権者の合意のもと、オプトアウトまたはオプトアウトの撤回(オプトイン)を決定する必要があるとも定めています。とりわけ、EU非加盟国において有効化された欧州特許権利者も、他の権利者とともに、オプトアウトを請求する必要があります。
特許を統一特許裁判所の専属管轄権から除外するオプトアウト手続を有効とするための要件は以下となります:
- UPCで訴訟が提起されていないこと
- 特許権者/出願人およびUPC代理人のみがオプトアウトを申請できる。ライセンシーは、専用実施権であっても申請権限を持たない
- 異なるEPC指定国においてそれぞれ共同特許権者あるいは複数の特許権者が存在する場合、すべての特許権者/出願人がオプトアウトに同意して署名するか、共同代表者を指定する必要がある
- 実質的な所有者が、EPO レジスターおよび有効化の行われた国の特許登録簿に登録されている権利者と一致しない場合は、特許出願人および特許権者の変更を事前に登録する必要がある。あるいは、特許権の実質的な所有者を証明する宣誓書を提出することが必要
UPCレジストリは、オプトアウト申請内容の正確性についてはチェックせず、申請事実を公開し、公開の時点でUPC管轄の適用除外が有効となります。
しかし、オプトアウト申請は訴訟の対象となり得、また不正確性によりオプトアウトの有効性が損なわれ、UPC管轄の適用除外が無効となる可能性があります。
こうした理由から、オプトアウト申請の有効性が確実に認められるようすべての要件を申請前に確認することが推奨されます。
手続規則には最近、規則5Aが新たに追加されました。これは、正式に許可されていないオプトアウト申請、または正式に許可されていないオプトアウト申請の取下(オプトイン)に関する裁判所の取り扱い方法を定めたものです。
この場合、特許権者または出願人は、正式に許可されていないオプトアウト申請、または正式に許可されていないオプトアウトの取下請求をレジストリから削除する申請書を、理由を添えて提出することができます。
弊所では、上記に関してさらに詳しい情報を提供させていただける他、オプトアウト手続に関する以下のようなサービスもおこなっております。
- EPOレジスターおよび国内登録簿に登録されている実際の特許権者のチェック
- 所有権、名義、登録事務所の変更登録
- オプトアウト申請書作成及び提出、ならびに実際の特許権者の宣言書作成
- UPCレジストリのモニタリング
- オプトイン/オプトアウト申請のドラフト作成および申請提出
- 控訴裁判所へのレビュー請求のドラフト作成および申請提出
各種サービスのお見積りのお問い合わせは、弊所までご連絡ください。