欧州特許庁から審判請求庁費用返還を受けるための選択肢が増えました。

欧州特許庁(EPO)は、審判請求庁費用の返還を規定するEPC規則第103の改正を行いました。新規則は、審判請求庁費用を含む一部の庁費用の引き上げと同時に、4月1日に施行されました。

EPC規則103の改正は、審判請求人に審判を取り下げるインセンティブを与えることで、EPO審判部に係属している案件のバックログを減らすことを目的としています。

以下は庁費用返還の新基準を図表化したものです。

まず、EPC規則103(1)については変更されておらず、請求理由(Ground of Appeal)提出前かつ、請求理由提出期限(請求の対象となる決定の通知の日から4ヶ月)満了前に審判を取り下げた場合には、審判請求庁費用を全額返還すると規定しています。

一方、EPC規則103(2)の改正により、手続中に審判請求庁費用の返還を得ることのできる選択肢が増えました。特に、一定の段階での審判請求庁費用の75%または25%の返還が導入され、従来までの50%の返還を得るための条件も更新されました。

具体的には、改正後のEPC規則103(2)で以下のように規定されています。

  • 審判部が審判請求に関して審理を開始する旨を通知した日から2ヶ月以内に審判を取り下げた場合、審判請求庁費用の75%が返還される。
  • 請求理由の提出後で、以下の期間に審判が取り下げられた場合には、審判請求庁費用の50%が返還される。
    • 口頭手続きの日が設定されている場合は、口頭手続き準備に関する審判部の通知から1ヶ月以内。
    • 口頭手続きが設定されておらず、かつ審判部が審判請求人に意見書の提出を求めている場合は、提出期限日の満了前。
    • この他の場合においては、決定通知の発行前。

また、改正後のEPC規則103(3)(a)では、口頭手続き準備に関する審査部の通知から1ヶ月以内に取り下げを行うことを求めています(従来の文言では、口頭手続きの日の少なくとも4週間前までに取り下げることが求められていました)。

最後に、新しいEPC規則103(4)では、以下のような場合には、審判請求庁費用の25%を返還すると規定しています。

  • 口頭手続き準備のために審判部が発行した通知から1ヶ月の期間が経過した後で、口頭手続きで決定が発表される前に審判が取り下げられた場合。
  • 審判部の設定した意見書提出期限が経過した後で、決定通知が発行される前に審判が取り下げられた場合。
  • 口頭手続き準備のために審判部が発行した通知から1ヶ月以内に口頭手続き請求が取り下げられ、したがって口頭手続きが行われない場合。

こうした庁費用返還に関する新しい基準の導入により、欧州特許庁は審判手続き関連の幾つかの手続きを柔軟にして多数の係属中の審判案件を減らすことをねらっており、特に、一定の条件下において上記の返還条件に複数該当する可能性がある場合は、混乱を避けるために最も高い割合で庁費用を返還するとしています。

弊所専門チームより本件に関してさらに詳しいご説明をさせていただくことも可能です。お問い合わせは弊所連絡先および電子メール(info@studiotorta.it)までお気軽にお申し付けください。

Mirko Bergadano

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